ストレートティーでは多すぎる。

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高野音彦さんイラストのラノベ『明日、今日の君に逢えなくても』の感想

こんにちは。今回は私の大好きなイラストレーター、高野音彦さんがイラストを担当されたライトノベル、『明日、今日の君に逢えなくても』の感想を書きたいと思います。

 

明日、今日の君に逢えなくても « icenotes.grid

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 高野音彦さんは、私の一番大好きなイラストレーターさんです。

色使いに透明感というか、それぞれを見るとものすごく多彩な色でイラストが彩色されているのですが、全体で見ると実に味わいのある空気感を持った画家さんです。2010年ころは一時的に活動を停止されていた様ですが、東日本大震災を期に復帰されています。私の住んでいる所の近くのラーメン屋さんも震災によって実家が被災し、家業を継ぐためにラーメン屋を閉めてしまいましたし、東日本大震災は本当に、被害や実際の事象以上に私も含めて多くの人間の価値観や生き方を変えたんだな、と思わずにはいられません。そんな中、高野さんは久々に今作で小説の挿絵に復帰されました。

 というわけで、恐縮ながら完全なるジャケ買い、というか挿絵買いだった今作、弥生志郎さんの作品も初めて読んでみたのですが、挿絵の空気感を非常に活かした良作でしたので、遅まきながらレビューしたいと思います。

 

■シノニムによる物語(短評)

 本作の根幹をなす設定シノニムとは、解離性同物異名症候群の略称で、主人公の妹はこのシノニムに罹患しています。女の子らしく可愛らしい藍里、明るく活発で走ることが大好きな茜、ロックを愛好し、確かな自分の世界を持つ蘭香。これらの人格がそれぞれの章で語られ、最終章で帰結する構成になっています。一見すると多重人格障害と同様に感じられますが、これを架空の病気にしたのは、ある『理由』によるためだとあとがきで語られています。物語のキモになるこの理由については今回は記述しませんが、これらによる人格との別離が各章で描かれるのですが、これが非常に完成度が高いです。サスペンス性もあり、青春群像も描かれていますので、満足感の高いものに仕上がっています。

 これに対して全ての謎が明かされる最終章は、作者自身の悩みが見て取れるように苦しんだ結果のような跡が随所に見られ、『もう少し割りきってしまっても良かったのでは。。。!』と思ってしまうような印象を受けました。

 きっと作者の弥生さんが正直な方なのだと思いますが、もう少しボリュームを増やして、前半の物語に並ぶだけの作り込みをしても良かったのではないかと思います。

 とはいえ、私としては高野音彦さんの挿絵だけでなく、物語を十分に楽しませて頂きましたので、とても満足しています。高野さんのウェブサイトで絵を見てグッと来た方は買って損はない一品だと思います。

 

 

それでは。