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脱初心者!弓道の基本、弓返りに必要な3つのポイント【前編】

 

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<あらすじ>

・弓は勝手に返るもの

・弓返りは『素振り』が必要

・弓の下を回してやる

<あらすじここまで>

 

 

こんにちは。私は学生時代、弓道が大好きでした。

勿論、今でも大好きです。

これから少しずつですが、学生時代に学んだ弓道の知識を纏めていきたいと思っています。

 

まずは初心者からステップアップに必要で、つまづきがちな弓返りについて

ポイントを纏めたいと思います。

今回は弓返りの効果、必要性について説明して実践は後編でご紹介します。

 

■弓返りは本来自然に起こるもの

弓返りとは弓を引き尺一杯に引き、離れに至った際弓手(左手)の中で弓が回転する事を云います。

弓返りが起きない場合、弦はSライン曲線を描きながら脈所(手首)にバチリと当たるため、手首のカエシができていない初心者の方は、脈所に青あざを作ってしまうことがよくあります。

しかし、弓の構造を鑑みると弓返りは本来自然発生的に起こるもので、本来は意識的に止めてやらなければ『止まらない』ものなのです。

弓返りの効能を考えてみましょう。

 

■弓返りの効果・打ち切りの効果

和弓は弓の右側に矢をつがえるため、そのままリリースすると矢は直進しません。

どんなに後ろからまっすぐに弦が矢を押しても矢は右へ右へと押し出されてしまいます。これは、矢が弓の中心を貫通している訳ではなくあくまで右側を通っているからです。

弓返りはこのリリース時に弓に回転運動をさせてやることで弓自体に歪みを発生させ、瞬間的に弦がまっすぐ矢を押した時に正面の的へ向かって力を押し出せるようにしてやる、という正に弓道の根幹となる技法です。

つまり『弓返りをさせなければ本来、矢はまっすぐ飛ばない』という事です。

そんなこと無いよ!まっすぐ飛ぶよ!という方も当然いらっしゃると思いますが、何らかのエネルギーをロスしていると考えて下さい。

 

ちなみに、江戸時代以前の弓術には弓返りをさせない打ち切りという射法があり、

離れの瞬間にがっちりと握りこんで弓を固定する事により弓を返らせない射法があったといいます。これは合戦時に船に乗船して弓で攻撃する際に、弓返りにより誤って弓を海に落としてしまうと戦闘不能になってしまう事から、それを防ぐ方法として用いられていた様です。試してみるとばっちり脈所を弦が打ち、青あざを作りますのでご注意下さい。それもそのはず、昔の人は打ち切り射法を行う場合は『鞆(とも)』というテニスでつけるリストバンドみたいなものをつけて、直接肌に当たるのを避けていたのです。

鞆 - Wikipedia

恐るべき先達の弓術家の人々は、他にも続けざまに行動する事を表す『矢継ぎ早』の射法の時にも連射するために、この打ち切りを使用していた様です。とにかく現代の射法とは似て非なる事が多すぎるので、この辺りもそのうち書いていきたいと思います。

 

■矛盾を、矛盾なく、矛盾のままに

というのは古武術家、甲野善紀さんの言葉ですが、弓道の本質についても全く同じだと私は考えています。四角い石を真っ直ぐに削っていくと最終的には限りなく真円に近づくように、矛盾なく一つ一つを積み上げていくと矛盾に満ちた不思議な姿に変わっていきます。ぱっと見はどうやってやるの!?という矛盾に満ちた神ワザを矛盾なく行う。これには順序が非常に重要になります。

 

■理想的な弓返りと、現実的な私たち

理想的な弓返りについてざっと説明します。

・弓の上下の弭(ハズ)弦の掛かっている上下端が同時に回転していること

・左手首が左に振れず、まっすぐ親指が的へ向かっていること

・弓が親指一本分以上落ちていないこと

これらが成されていることを、弓返りと云って良いと私は思います。

反対に弓返りの出来ていない、または途上の状態はこの逆です。

・弓がスリコギ運動により暴れて回転している

・左手首を左にねじっている

・弓が親指一本以上落ちている

これらは、全て弓の運動を制御できているかどうか、という一点にかかっています。

そして、この全ては左手にゆるみがあるかどうか、と言い換えることもできます。

 

■ゆるませず、しかし弓が自由に動けるように

これこそ矛盾していますが、これを両立させなければ弓返りは出来ません。

これを会得すること、説明が難しいからこそ、初心者は弓返りが出来なくて良い。

という指導者が多いのです。間違って手首を痛めるよりは、出来ないほうが良い。という。

しかしこれを習得しなければ前に進むことは出来ません。

まず大事なのは弓を握る事に力を使うのではなく、弓を支える事に力を使う事を覚えましょう。

弓を支える。とは必要最小限の力で弓を持つ事です。体操選手が吊り革にぶら下がる時に自重を支える以上の力を使わないように、本当に必要な力だけで弓を支えるのです。当然、脱力とは違いますので引き分け時に弦を引く事により抵抗が増していく分だけ、支える力は大きくなります。ですが、必要な分だけ。それだけです。

試しに弓を強く握っている状態で手首をトン、と誰かに打ってもらうとその瞬間手元が脱力するのがわかります。それが、離れでのゆるみです。

弓を落とすギリギリの力で支えている状態で同じように手首を打ってもらって下さい。今度はキュっと手元が締まるはずです。これが弓を支えるという事です。

弓返りをさせるためには必要以上に構えて、準備してはいけません。

最低限の力で弓を支えて、なおかつ弓が動くのを邪魔しないように。

そうすれば、弓は自然に返ります。

 

次回は射法八節に則りながら、実践的に弓返りの仕方を説明します。

 

それでは。